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知る人ぞ知るマイナーな保険

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リスクの数だけ保険がある

保険ときいて思いつくのは、やはり自動車保険、火災保険、傷害保険といった自分自身が加入している保険でしょう。勤務先で保険関連の仕事をされている方であれば、労災保険や店舗休業保険なんかも思いつくかもしれませんね。しかし、保険会社はあらゆるリスクに備えて、一般の方には「え?そんな保険聞いたことないよ?」と思われるような商品も販売しています。今回は保険の中でも比較的マイナー、あるいは契約者が少なそうな商品を紹介します。知っている商品があれば、むしろ貴方は保険マニアかもしれません。

船に関する保険

海上での移動手段として用いられる船。お客さんを乗せて運ぶ船、ヨット、モーターボート、漁船なんかも船ですよね。これらが海上で事故に遭って破損してしまった場合を補償する保険があります。どの保険に加入するか、区別する方法はズバリ船そのものの大きさです。ある一定の大きさ(この大きさの基準は保険会社によって分かれるかもしれないので、敢えてこのような書き方をします)より小さいものはヨット・モーターボート保険、大きいものは船舶保険に加入します。ヨット・モーターボート保険は、自動車保険の船版だと考えると分かりやすいです。車両保険=船本体の補償、搭乗者傷害=船の搭乗者の傷害補償、対人・対物賠償=船との事故で怪我した相手や破損したものの補償という風にです。自動車保険にないものをあえてあげるとすれば、事故で遭難した人を探すための費用を補償する特約がついているところでしょうか。他の仕組みは一般的な損害保険と同じで、始期前に申し込み書を交わし、契約を成立させ、お金を支払えばそれで補償が始まります。一方船舶の保険は、少し特殊です。船舶保険は船の所有者が加入する保険です。船は荷物を運搬することもあれば、荷物を運び出すために地上に繋がれていることもありますし、かと思えば仕事がない時は長期間倉庫に留まっていることもあります。時には修理のために修理業者に船を引き渡すこともありますが、その時は修理業者が保険をかけたりします。いずれにせよ大きな船体に関する保険ですから、保険料も相当なものです。年間400万円の保険料を4分割で・・・等といった具合に、7桁の保険料が当たり前の世界です。船舶保険の面白いところは、始期が変わってしまうことです。船ですから、出発日は海の時化や天候に左右されます。「今日は海が時化っているから、出発日は明日だな」と判断すれば、始期は次の日になります。極端に言えば、船が出港したその日が始期日となります。船が出港したら、地上に残っている人が契約手続きをします。普通の自動車保険とは逆なんですね。「明日は時化そうだから、予定を早めて今日出港しよう」というのも可能です。1日出港日が変わることで保険料が変わる可能性もゼロではありません。船舶保険を担当する保険会社の社員は「○○会社の△△号が今日出航しました」と聞くと、あらかじめ用意していた書類を持ち出し、さあ契約手続きをするか・・・と動き出すのです。ちなみに私が勤務していた会社では船舶保険を販売するのにあたり特別な資格は不要でしたが、販売できる代理店をかなり絞っていました。特殊な保険なのできちんと説明責任を果たせる代理店ではないと取り扱いをさせたくなかったんでしょうね。ちなみに保険料は代理店では計算できず、保険会社のシステムで計算するため、代理店がすることと言えば契約書に捺印を貰いに行くことと、保険料を領収しに行くことくらいです。その保険料でさえ今時は振込み可能なのですから、代理店の作業は本当に少なく、代理店手数料も保険料100万円に対して1000円~2000円前後くらいと本当に安価でした。代理店が船舶保険を販売できても、大した旨みはないということです。せいぜい他の代理店に顧客が流れるのを防ぐくらいですかね?

事故は発生していないのに補償するゴルファー保険

ゴルフの経験がある方ならご存知かもしれません。ゴルフをプレイ中に用具を破損してしまった、人に怪我をさせてしまった、そんな事故を補償してくれるゴルファー保険。その中には、ホールインワンやアルバトロス(1打目でカップインすること)した際に達成者が負担するお祝いのお金を補償してくれるものがあるのです。過去にはホールインワン達成パーティーなどが開かれていたようですが、近年は贈答品を渡すのが主流だとか。ホールインワンは事故ではなく、むしろおめでたい話なのですが、契約者(達成者)にとって急な出費を強いられるリスクと考えることもできます。これは誰も傷つくものではありませんし、保険金を貰えること自体が嬉しい話ですよね。

動物に関する保険

10年以上前の話ですが、ある大学教授が「ペットに保険をかけることはできない。なぜならペットは人間の言葉を話せないから、いつどこで怪我をしたということが報告できないから」と仰っているのを聞いたことがあります。しかし、現在ではアニコム損保やアクサといった少額短期保険を専門とする保険会社を中心にペット保険が販売されていますね。ペットも家族という考えが浸透していますし、ペットの治療費は何かと高額なものですから、取り扱う代理店も増えてきています。一方、損害保険会社にも動物に関連する保険が若干あります。例えば、ハンター保険。狩猟中に怪我をした、狩猟中に用具を壊してしまった等のリスクに備える保険です。通常の傷害保険では狩猟中の怪我は免責扱いされるため(免責にはしない会社もあるかもしれませんが・・・)、上乗せでこのような保険をかける人がいます。個人で入ることも出来ますし、地元のハンターの集まり(組合のようなもの)でかける人もいます。他に思いつくのは、馬主さんがかける競走馬保険ですね。ただしこれは保険会社でも認知度は低く、競馬場近くの社員がかろうじて保険料を計算できるくらいの代物です。都会で働く社員に聞くと「ウチの会社にそんな保険あったの?」と言われるくらいマイナーです。更にマイナーなのを挙げるとすれば、牛の爪を整える仕事(削蹄)の保険ですね。これは牛の爪を整えている最中に牛に傷を負わせてしまう等、仕事の遂行上で起こった賠償について補償するものなので賠償責任保険の分野に当たります。担当代理店の客先にこの保険の契約者がいたため、1年に1度この保険料計算が仕事としてまわってくるのですが(あまりにマニアックな商品のため保険料率が代理店には公表されていない)、初めて担当する人は「削蹄って何?」の意味から調べなければならず、皆貴重な経験をさせられたものです。

入札・履行に関する保険

役所が依頼する仕事に対して発生する保険です。入札保証保険は、入札した業者が落札しておきながら実際の契約をしなかった場合に入札者が被る損害を補てんするものです。履行保証保険は、入札後に業者がその仕事を完遂しなかった場合に依頼者が被る損害を補てんするものです。役所から「保険をかけないと入札に参加できません」と加入を指示されることもあれば、企業自ら保険に加入してくる場合もあるのですが、要は保険会社に保証人になれと言っているようなものです。保険会社社員の中には「入札保証や履行保証は保険ではない」と言っている人もいるくらいです。役所が新年度にあたって開始する事業に対してかけようとする場合が多いため、この保険の成約が多くなるのは3月から4月にかけてです。○○小学校の補修工事とか、役所が発行する冊子の印刷等、対象となる仕事はたくさんあります。他にも突発的に発生する道路工事や建物の修理等があるので、他の時期にも決してないわけではないのですが・・・とにかく面倒です。万が一その会社が倒産でもしてしまった日には、保険会社がその損失を被らなければいけないのですから。よって契約ができるのは自動車保険や火災保険等で契約実績があり経営の実態がある程度把握できている会社、あるいは財務諸表を提出してくれてその安全性が伺える会社等非常に限定されていました。

最後に

他にもガラス保険や航空保険等色々な保険があるのですが、今回挙げた保険商品のうち、貴方が聞いたことがある保険はありましたか?ディーラー担当の社員は自動車保険の対応がメインになるので、社員であってもその実情を知らないことがあります。知り合いに損保の社員がいたら、ちょっと聞いてみると面白いかも!?