保険会社の社員の仕事って?
保険会社に勤務しているすべての人が、必ずしも保険に詳しいとは限りません。営業の部署や事故対応の部署に勤務していれば当然保険に関する知識はありますが、人によっては自動車保険ばかり対応していて火災保険のことは一切わからない、逆に火災保険のことは知っているけれど自動車保険のことは知らない等所属する部署によって知識のレベルも様々です。保険会社は保険の契約を多数獲得することが売上に繋がりますが、それは経理や人事、システム開発等様々な人が関って初めてできることです。今回は、保険に関らない仕事をする保険会社の社員の業務についてお話させて頂きます。
人事、採用等 人に関る仕事
2016年卒から新卒の採用スケジュールが変わってきたため、来春の就職を目指す学生にとって、夏のこの時期は企業説明会に参加するのがメインの活動となっているようです。例年金融業界は学生からの人気が高い業界ではありますが、やはり銀行に憧れる学生が多く、保険と聞くと「ノルマがありそう」「契約を獲得できないと大変そう」というイメージを持っている学生が多いのではないか?という印象を受けます。そこで保険会社の人事担当者は、就職活動のスケジュールを熟知するのは勿論のこと、各地で企業説明会を開催したり、OBOG訪問や先輩社員からの講話といった交流する場を設けたりします。保険会社とはどのような仕事をする会社なのか、自社にはどのような魅力があるのかを説明し、たくさんの優秀な学生に応募してもらえるよう働きかけます。選考、面接を重ね見事内定となった学生には、入社前の宿題や課題を与えたり、内定者同士の顔合わせをしたり等色々なフォローを行います。それが対外的な役割です。一方で、社内に向けてはどのような業務を行っているかというと、主に2つです。まず各部署への人員配置に関わることです。人事異動で誰をどこに転勤させるか、転勤や退職、あるいは産休等で人員不足の問題が発生していないか、人員が足りているように見えるが残業時間が多くて苦労している部署はないか等を見極め対処します。金融機関に勤務する者は、長期間同じ部署に居続けるということはそうありません。何せお金に関する仕事ですから、周囲の目を盗んで不正を働いている可能性もゼロでありませんからね。よって、平均で4~5年の間隔で人事異動をする保険会社が多いです。(ちなみに国内3大メガ損保の人事異動は3月です。4月から新年度が始まるので、新年度の戦略や方針を早々に打ち立て、実行に移すためです)ただし地方勤務で全国転勤のしばりがない女性社員になると、他に転勤できる部署もないので、そのような場合は抜き打ちで机の検査をしたり(要するに、不正に関する怪しいものがないかチェックですね)、監査担当者が面接をしたりして何十年も勤務し続けるというのはありえますので、ケースバイケースですね。人事担当者のもう1つの役割は、社員の育成です。新入社員の研修だけではなく、節目の年に行う○年目研修、新たにリーダーになった社員に部下をどのように引っ張っていくかを教えるリーダー向け研修、個人のスキルアップ研修等会社生活に役立つ研修や講座を開催することも大切な業務の1つです。
保険料、保険金をはじめとするお金に関る仕事
一般の会社と同じように、保険会社にも経理部門があります。オフィスで私用するコピー用紙やインク、社員の出張の交通費、移動にかかるガソリン代、客先への手土産等仕事をする上で経費精算は欠かせませんね。勿論経費が適正に使用されているか領収証をチェックしたり、金額をチェックしたりといった監査の役割も担っています。そして保険会社ならではの、保険料に関る仕事も経理部門が行います。一例を挙げると、保険には共同保険というものがあります。1つの保険契約をA社50%、B社50%というようにシェアすることで、巨大な損害が起こった時の保険金支払いに備えられるというメリットがあります。また、1つの保険契約を獲得するにあたり複数の代理店が尽力した場合に用いられることもあります。仮に共同保険で契約したとしても、契約者がお金を払うのは1回だけです。先ほどの例でいくとメインの手続きをする会社をA社と決めたら、A社の申込書で手続きを交わし、A社に保険料を支払います。A社の経理はその保険料のうち、B社に渡す分を差し引きし、送金手続きします。受け取ったB社はA社から送金された金額と申込書の内容を付け合せし、B社の契約として登録作業を行います。このような特殊な送金は、基本的には経理部門が一括して行っています。保険会社によっては会計部門という名称で呼ばれているかもしれませんね。経理、会計と聞くと「簿記の資格とか必要なんじゃないの!?」「決算書の読み方とか必要なんじゃないの!?」と思われる方もいますが、保険料会計はそのような専門知識とは別のものですので、知識の無い初心者でも配属される可能性が大いにあります。
システムに関る仕事
契約情報、事故の進捗、契約の計上(紙の申込書の内容を代理店や保険会社の者がパソコンに登録すること)等、保険会社の業務は保険会社固有のシステムによって管理されています。また昔保険料が一律だった時代は紙の保険料表を見れば保険料はすぐ分かったものですが、今はパソコンで計算しないと保険料が計算できません。(自賠責だけは未だ紙ベースで分かりますが・・・)このシステムを構築するのも保険会社の社員の役割です。実際にシステムを作る工程はアウトソーシングして系列会社に作らせているかもしれませんが、このシステムがないと、保険会社の社員も代理店も何も仕事ができません。保険は定期的に改定が行われるので、その度に画面を変える必要があります。来月から○○特約を新たに販売する!となれば保険料計算画面にその項目を設けなければなりませんし、古い特約を誤って販売することのないよう古い特約の名称をグレーアウトさせたり、間違った操作をした時にはエラーメッセージがかかるようにと皆が操作しやすい画面作りに拘り日々作業しています。また、システムに関る業務は新商品販売や改定の時だけに留まりません。日々の業務でも代理店から操作方法の照会を受けたりすることがあるので、専用のコールセンターを設け、時には同じ画面を見ながら操作し、問題を解決することもあります。複数の保険会社を扱う代理店だと、それぞれ微妙に異なる操作方法のため使い方が分からなくなってしまうこともありますし、社員が休みの土日に営業しているディーラー代理店は緊急時に操作方法を教えてくれる人がいないと、お客様に迷惑をかけてしまいますしね。事故のコールセンターのように24時間365日というわけにはいきませんが、一般的な店舗の営業時間(朝9時から夜8時くらい)にあわせてシステム操作に関るコールセンターが各保険会社で運用されています。
保険を知らなくても不思議ではない
今回取り上げた人事、経理、システム関連の仕事だと、現在販売中の保険に関する商品知識がなくても業務ができてしまうので、保険会社の社員でありながら保険のことを全く知らないというなんとも不思議な構図ができあがってしまうのです。中には、「自分は現場(営業あるいは事故受付)に出ても何も知識がないから、転勤したくない」と思っている人もいます。逆に現場は辛いから早く裏方に廻りたいと思っている人も・・・。色々な業務に携わる人がいて初めて保険会社の仕事が成り立っているということが分かっていただけたでしょうか。