契約内容の確認
保険を契約する時に、申込書の他に「契約内容確認書」「意向確認書」という書類に記入・サインしたことはないでしょうか。これは、「申込書に記載されている契約内容に相違はないか」「申込書に記載されている名前や住所等の情報に誤りはないか」「代理店から保険金が支払われない場合等の重要事項について説明を受けたか」等、一連の契約行為について問題がないかどうかを確認させるものです。正直「さんざん書類を書いてきたのに、何でこんなものを書かされるの?」と思ったかたもいるでしょう。もしかしたら、書いたことを忘れている方もいるかもしれません。あまりお客様に重要視されていないこの「契約内容確認書」こそ、保険会社にとっては必要な書類なのです。2006年頃から損害保険の引き受け時に、必要な割引が適用されていなかった契約がたくさんあることが発覚し、各社一斉に調査を開始。割引を適用されていなかった契約については過去契約に遡って契約を訂正し、差額分については返還するという動きが活発化しました。これにより商品内容が複雑すぎて代理店が保険の内容を正しく説明できていない、結果お客様が本来受けられるはずの割引というメリットを正しく享受できていないということが路程しました。よって、現在販売されている自動車保険や火災保険は、分かりやすさや販売のしやすさに焦点を当て、当時のものと比べて仕組みが簡素化になっています。それに併せて、契約時に正しい説明がなされているかを紙ベースで記録しておくことも必要という流れが起こり、前述の「契約内容確認書」が生まれたのです。では、実際にどんな訂正が多かったのか、今回は私がよく対応した間違いをご紹介します。
【自動車保険】安全装置の誤り
自動車保険では、車の安全装置の有無によって割引になるという仕組みがありました。その安全装置とは、エアバック、横滑り防止装置、イモビライザー、ABS等です。装置によって割引率は違いますが、概ね3%~5%程度保険料が安くなります。自動車保険の誤りといえば、この装置の有無を見逃している契約が殆どでした。1つ1つの契約で返還になる保険料は数百円単位と微々たるものですが、それが7~8年分はまとめて返還になるので、お客様にとっては臨時の収入になったようです。私が知る限り「保険料を多く支払わされた!」とお叱りを受けるようなことはなく、むしろ「自分の自動車保険もお金が戻ってくるんですか?」と誤りがあってほしい、誤りがあった方が嬉しいといった問い合わせが多かったです。ちなみに、代理店自身も自分の自動車保険の契約でイモビライザー割引が漏れていたと申告してきたこともありました。それは単純に自分のミスでは?と思うのですが、代理店自身の契約は訂正してはいけないというルールもなかったので、他のお客様と同じように訂正して差額返還しました。その時思いました、自分のミスを堂々とひけらかす代理店にプライドはないなのか?と・・・。貰えるものは貰ってしまえ、の精神だったのでしょう。(会社自体も返還優先で仕事を進めさせていたので、そのような精神論を唱えている暇はありませんでしたが)自動車保険は他にも免許証の色の誤りで保険料を返還ということがありましたが、その他の誤りは保険料自体に変更はない登録番号の誤りや車体番号の誤りぐらいでした。現在の自動車保険はこれらの割引が簡素化されて、せいぜいイモビライザー割引くらいしか残っていないはずです。
【火災保険】評価額の誤り
火災保険の契約時には、保険の対象となる建物や家財に対して「いくらの価値があるか」と評価をし、それを元に保険金額を決定します。新築の家ならば勿論建築価格がそのまま保険金額になります。しかし、中古物件になると建築価格から減価償却させた金額で評価しなければなりません。2006年時の誤りであったのが、マンションの評価額です。マンションの購入額を、そのまま保険金額にしている契約が多かったのです。何故これがいけないのか?マンションを購入したことのある方はご存知かと思いますが、マンションの購入価格の中には一部土地代だったり、エレベーターやエントランスの共有部分の費用だったりが含まれています。しかし、本来お客様が火災保険をかけるべき部分は、自分が所有している部分です。土地はそもそも火災保険の対象ではありませんし、マンション内の共有部分については管理会社が保険をかけるべき部分です。これを知らずに、購入価格をそのまま保険金額として契約しており、評価をし直してみたら保険をかけすぎていた・・・という契約がたくさんありました。これに地震保険がついていた場合、地震保険は火災保険の契約金額の30%~50%の金額までしか契約できないというルールがありますから、自ずと地震保険もかけすぎということになり、火災保険分と地震保険分併せて返還になった方もいます。
【火災保険】地震保険の建築年割引
昭和56年6月以降に建てられた建物は、建物登記簿謄本等の公的資料のコピーを提出すれば、地震保険に加入する際に「建築年割引」を適用させることが可能です。ただし、この割引はお客様が「公的資料を取りに行くのが面倒くさいから、割引なんていらないよ」と言われればそれまでで、割引を強制させるまでの効力は持っていません。代理店から説明を受けていないので割引を知らなかった人、代理店から説明を受けたけれども割引を使わなかった人、色々いると思いますが、この割引もやたらと訂正が多かったと記憶しています。火災保険は10年、20年、中には30年といった長い保険期間で契約しているものもあります。そのような長期の契約者に対しても、DMや代理店からの電話等で確認作業が行われているので、今更「自分の家の契約、建築年割引が漏れている!」といった人はまずいないと思います。代理店が申込書を作成する時のシステムでも、建築年を入力すると「割引をおすすめしましょう」「割引適用が漏れていませんか」のような注意メッセージが出てくるので、代理店が説明を忘れることもほぼありません。この割引は1度公的資料のコピーを提出すれば、更新契約では再度の提出は不要ですので、万が一にも割引されていないという人は今すぐ申し出をして下さい。
簡素化はあっても省略されることはない
今回は代表的なものを3つ紹介しました。火災保険でいえば、申込書が「壁はコンクリートなのにレンガ造りになっている」「3階建てなのに2階建てになっている」といった簡単な誤りもありました。契約是正が起こった背景に、保険の複雑さがあることは間違いありません。あまりに中身が複雑すぎて理解しきれていない、ゆえに現在の保険は商品内容もできる限りシンプルに、制度も難しくないようにと配慮されています。一方で、お客様も申込書の内容をきちんと確認していないという事実も見逃してはいけません。だって、自分の家の火災保険の申込書で2階と3階が下記間違っていたら、気付くはずですよね?よって代理店、お客様がきちんと契約内容を確認したという証拠を残すための「契約内容確認書」が必要なのです。この契約内容確認の活動は損害保険に限らず、生命保険でも行われています。日本生命のCMでもありますよね、「ご契約内容確認活動を実施しています」と。お客様にとっては面倒なことかもしれませんが、契約誤りの多発という過去があったからこそ、それを2度と起こさないためにも契約内容の確認は欠かせないのです。