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コンプライアンス問題を発生させない対策

コンプライアンス問題の芽は早めに摘んでおく

以前金融機関に勤めている人の給料が他の業種に比べて高い理由を、こんな風に述べている人がいました。「お金を取り扱うことが多いから、目の前にあるお金をつい横領したくなってしまう。でも自分の給料が高かったら、たくさんお金を持っているから心に余裕があるし、盗もうとは思わない。だから高い給料が貰える」
事の真偽は分かりませんが、確かに給料が高いのは事実です。自然災害で高額な保険金支払いが続いているとか、自動車保険が売れないとか(若者が車を購入しない&高齢者が車を手放す)で業界的には勢いが衰えているとかで成長しているとは言えないものの、一般企業よりは良いお給料を貰える業界ではあります。(昔は年3回ボーナスがあったとか羽振りの良い話も聞いたことがありますしね・・・)給料を高く支払うことでコンプライアンス問題を防げるならば、それも1つの対策なのかもしれません。コンプライアンス問題は重要度が高いものは金融庁に報告しなければならないほど、取り扱いが厳しい問題です。発生したら都度対応するのではなく、発生させないよう常日頃から対策をとっておくことが必要です。というわけで、今回はコンプライアンス問題を発生させないためにとられている対策や仕組みについて記載します。

定期的な注意喚起

代理店で不祥事が発生した時には、その代理店に対しての処罰や再発防止策を検討させる等の措置を講じます。一方で情報共有として同じエリアで募集している代理店にも事実を公表することで情報を共有し、注意喚起を行います。また、定期的に代理店監査を行うことで、保険料の不正な授受がないか、申込書類に不審な点はないかを確認します。監査で指摘を受けないために正しい募集をしているわけではありませんが、監査があることで一定の効果を生むこともまた事実です。また、保険会社内でも社員による不祥事というものがあります。それこそ、経費の不正な請求といった個人の財産に関わることから、不正な契約の引き受けといった業務に関わることまでコンプライアンス問題はいつどこで発生するか分かりません。1年に複数回コンプライアンス研修を開催する、あるいはeラーニングで学習する等して定期的にコンプライアンスに触れる機会を作っています。

現金よりもキャッシュレス

キャッシュレスが進んだ背景には、契約時に現金を扱わなくても良い気軽さがあり、契約までに現金を用意せずとも契約を交わすことができるうえに、補償も始まるという簡便さがありました。それだけではなく、コンプライアンスの面も非常に良い面があります。例えば、保険料の着服。通常代理店が集金した保険料は1度代理店口座に預け入れ、翌月に保険会社へ精算を行いますが、それまでの間に不正に使用するということが防げます。また、現金のやりとりがないことから「小銭がなくて10円足りないけれど、代理店が立て替えておく」のような保険料の不正な割引も防げます。お客様の中には口座番号を知られるのが嫌だ、そもそも引き落としできる口座がない(漁協や漁組等一部のマイナーな金融機関の場合だと、保険会社と提携していないので保険料引き落としができないのです)という方もいますが、そのような方であっても利用できるコンビニ払、クレジットカード払、請求書払等支払い方法も増えてきました。私は経験したことはありませんが、ネットバンキングで自宅にいながら決済できる保険会社もあるのかもしれません。いずれにせよ現金を扱わないことで、保険料に関するコンプライアンス問題を減らせることになったのは事実です。

情報漏洩リスク

保険会社は媒体を問わずたくさんの個人情報を扱います。申込の手続きの際には紙ベース、1度契約し終えればパソコン上に契約者の個人情報が保存されますので、その取り扱いには注意が必要です。募集人がお客様と面談でノートパソコンを持ち出す場合には、肌身離さず持ち歩き、盗難を防ぎます。お手洗いに行く時も、ノートパソコンを抱きしめて行くくらい徹底されています。勿論、パソコンには当然IDとPWが設定され、すぐには閲覧できないようになっていますが、「簡単に見られないだろうから盗まれても平気だ~」というわけではありません。個人情報流出が発生すれば大々的にニュースになる時代ですから、その取り扱いには十分な注意が必要になります。また、紙ベースでのやりとりの場合は、書類と一緒に送付状をつけて送り主と受取主の双方で内容が確認できるよう体制を整えているところもあります。送り状があれば「送った」「送ってない」の水掛け論を避けることができます。そもそも個人情報とは、個人を識別できる情報のことです。具体的には名前、住所、電話番号、住民票のコード等です。仮に保険契約の証券番号が他人に知られたとしても、証券番号だけでは誰が契約者かどうかは一般人には特定することができませんので、取り扱い方が違います。保険に関するものが何でも個人情報というわけではありませんので、覚えておいて下さい。

第三者チェック

ある生命保険会社の満期対応の話をご紹介します。営業マンが契約者宅で満期返れい金を渡している最中に電話をかけ、「○○(契約者の名前)様でしょうか?私は△△(営業マン)の上司ですが、お金はきちんとお手元に届きましたか?」「金額は●●円で間違っていませんか?」と確認するのです。これで営業マンが満期返れい金を丸ごと着服したり、金額の一部をごまかしたりするようなことは出来ません。営業マンにしてみれば「信用されていないの?」と思うかもしれませんが、やはり大金を手にすると人間の心は揺らぐものです。キャッシュレスの進んでいない会社は、キャッシュレスが進んでいる会社に比べお金に関するコンプライアンス問題が多く発生する傾向にあるようです。キャッシュレスでしたら、自分の手元にお金は通らないし、振込は口座でしっかり管理されているからやりようがないんですよね。金融機関に勤務する人間に転勤族が多かったり長期間の有給休暇が推奨されていたりするのも、特定の人間との癒着がないようにするためですからね。とにもかくにも、1つの案件に色々な人間が関わることで第三者の目が入りますから、それでコンプライアンス問題が未然に防げることも期待されます。

抜き打ちチェック

他人名義の印鑑を使っていないか、契約者以外の人間がサインをしていないかをチェックするために、申込書を抜き打ちでチェックすることもします。毎年更新している契約だと、昨年やそれより前の年の申込書の控えが残っていますから、それを参考に印影を比べたり、筆跡をチェックしたりします。勿論契約者の都合で印鑑が変わることもありますし、代理で本人ではなく配偶者がサインすることもありますから、必ずしもそれで不正が見つかるわけではないのですが・・・。しかし、この抜き打ち検査のおかげで、本当に代理店が勝手に印鑑を押して契約したという案件が見つかったこともあります。その申込書はやたらと印影が薄くてはっきりしないものだったのですが、過去の契約や他の契約を見ると印影がはっきりしており、「何か怪しい・・・?」と思って色々調べたところ、契約者と連絡がとれなかったので先に自分で印鑑を買ってきて捺印し、後で契約者に了承を得ようと思っていたと白状しました。検査担当の目は鋭いのです。

最後に

といことで、コンプライアンス問題対策の一部を紹介しました。この記事を読んでいる方の契約がコンプライアンス問題に巻き込まれないよう祈りつつ、今回は終わりとさせていただきます。