お客様とは言え腹が立つ
保険会社に勤務していると、時々クレーマーからの電話を受け付けることがあります。例えば、高齢の男性から「家族全員で○○代理店の△△という奴から自動車保険に加入しているが、毎回説明が下手だ。保険会社としてきちんと教育しているのか?こんなレベルの低い募集人がいることを認識しているのか?」とお叱りを受けたことがあります。確かに説明が下手というご指摘に関して、募集人のレベルを引き上げることは保険会社社員としての責務だと思います。しかしながら、知識はあっても説明が下手という方もいらっしゃいますし、そもそも何故保険会社に文句を言いたくなるような人からどうして家族全員自動車保険に加入しているんでしょうか?文句があるなら、その募集人から加入しなければいいだけの話ではないでしょうか?その募集人からではなくてもウチの保険には加入できますよ!・・・とまあ、こんなことを心の中で思いつつお客様には「善処します」「改善するように努力します」とお詫びするわけです。さて、今回は保険会社に寄せられる理不尽なお客様からの要求や、お客様のこんな行動に手を焼いた!という実例を紹介します。これを読んでいる方が、これから紹介する事例に当てはまっていないことを願います。
保険料の引き落とし日に文句を言われる
保険料の口座引き落とし日は、大体の保険会社が25~26日頃に設定されていると思います。基本的に口座振替の契約は、その月に引き落としが出来なかった場合、翌月に再請求をするというのがセオリーなので、仮に引き落としできなくても契約は有効ですしそのまま翌月を待ってもらえればよいのですが。ここでお客様から言われるんですよね「ウチの給料日は30日だから、30日に引き落として頂戴」と。そもそも契約時の申込書に引き落とし日もしっかり書いてあるのに、何故今更それを言うのでしょうか。月末が給料日ならば、前月の給料を余分に残しておいて保険料の引き落としに当てるべきではないのでしょうか。これも面と向かって(ほとんど電話越しですが)お客様に言える台詞ではないので、「会社の規定で引き落とし日が定まっているので変えられないんです」と申し訳なさそうに伝えるくらいしかできませんでした。保険料の入金方法が口座振替か集金しかなかった時代は、この返事を貫き通しました。クレカ払いが始まるようになってからは、「口座振替だと26日ですが、クレジットカード払いですとカード会社の定める日に保険料が引き落としになります。月末に引き落としになるカード会社のカードに設定して頂ければお客様のご希望も叶いますので、是非更新からはクレジットカード払いをご検討下さい」とアレンジしましたけどね。基本的に振替不能になる人は常連が多いです。そういう人は、仮に引き落とし日が30日になっても振替不能になるのではないかと思っています。自分が契約すると決めた以上、支払うべきものは支払って欲しいと思います。
保険料を支払ってやるからいうことをきけ
再び保険料関連です。私が勤務していた会社は2ヶ月連続振替不能になると、3ヶ月目には口座への請求がストップし、代わりにコンビニで支払える振込票を発送するので、それで支払って下さいね、という仕組みでした。手を焼かされたのが、わざわざコンビニに支払いに行くのが面倒だからともう1度口座に請求しろと電話でゴネてきた契約者です。可能か不可能かで言えば、可能です。本来請求をする予定ではない契約者の口座に対して、保険会社が依頼をして特別に請求を行うことはできます。ただし受け付けてくれる金融機関と一切受け付けない金融機関がある上に、特別な請求を行うと余計な経費がかかるため、通常は行われない&保険会社側がミスをした時にだけ実行されるような特別対応なので、本当に裏技なのです。それを知ってか知らずかやれと言ってくる契約者。保険料を支払わなかったのはお客様側の非なのに、何故そこまで面倒を見てやらなければいけないのか。しかも口座から引き落とししてくれないと支払ってやらないぞ、くらいの上から目線。上司に相談したところ、上司からお断りしてもらえることになりました。理由としては①イレギュラー対応が出来ることを知られれば、またゴネてくる可能性がある。その時前回出来たから今回もやれとなる可能性がある②他の契約者はきちんとコンビニで払ってくれるのに、この契約者だけ特別扱いするのは不公平③保険料を支払うのは契約者の義務。本人が支払わないというのなら契約解除も已む無しということだろう、の3つです。女性に対してはバンバン要求を叩き付けてきた契約者も、それなりの年齢の男性が対応するとあっさり引き下がったらしく、お金は無事コンビニ経由で支払われました。(それなら最初からゴネないでほしい・・・)前述のとおり、保険料の支払いは契約者の義務です。そして、保険会社は事故の際に保険金を支払いするのが義務です。自分の会社と付き合いを長くしてほしいという気持ちもありますが、無理なことを実行してまで契約を維持させる義務はないのです。保険会社は慈善事業ではありません。
等級訂正を認めない
他社から契約を乗り換えてくれたお客様の自動車保険が、等級の適用誤りということで訂正が必要ということになりました。当社での申込書には前契約で事故なしとなっているのに、調査の結果事故1件事故があることが判明したのです。こうなると等級の訂正及び差額の領収が必要となります。訂正にはお客様のサインが必要なのですが、お客様が「事故なんて起こしていない。何かの間違いだ」と等級訂正を認めてくれません。他社で発生した事故の内容は個人情報の関係で分からないし、代理店は「お客様が保険使ってないっていっているし、これ以上問い合わせるのは気がひける」と対応がなかなか進みません。仕方ないので、直接お客様に電話で問い合わせました。お客様は「事故は起こしていないと言っているだろう」とお怒り気味でしたが、こちらも負けてはいられません。「保険でいう事故というものは、相手がいる事故だけではなく自分で車をぶつけたような自損事故も含みます。ご本人に限らず、ご家族の中で以前の契約期間中に車をぶつけて修理に出したようなご記憶はありませんか?また、修理費が直接修理工場に支払われている場合ですと、保険金がお客様の手元を通っていないので、保険を使ったという認識があまりないかもしれません。それも含めてもう1度ご確認いただけないでしょうか?」と噛み砕いて説明をしました。そうすると思い当たることがあったのか、その場で奥様に聞いてくださり、以前車をぶつけた際に修理してもらったことがあるという事実が発覚しました。まさにそれが保険を使ったということなんですよ、お客様!!奥様が保険を使っていたことを秘密にしていたのか、すっかり忘れていたのかは分かりませんが、「誤った等級を訂正する」ただそれだけのことに3ヶ月も時間をかけさせられた事例です。等級は誤魔化そうとしても損保の会社同士でネットワークがありますから、いずれバレます。バレると未払い分の差額が一気に徴収されるので、悪いことはしない方が身のためです。あと、保険について詳しくなくてもいいですから、事故で保険を使ったか使っていないかの認識くらいは持っていてほしいですね。
保険会社に物申す前に・・・
他にも「会社の通勤で車を使用しているのだが、自動車保険の証券提出が必須だから加入したい」と飛び込みで契約した挙句、1回も口座から保険料が引き落としされないまま契約を解除にした、なんて人もいました。証券だけ受け取れれば後はどうでもいいや~という考えなんでしょうね。不謹慎かもしれませんが、そういう人こそ1度事故を起こして保険のありがたみを痛感してほしいと思います。ここに紹介した契約者の例はほんの一部です。他にも悪質な例、困ったちゃんな例がたくさんありました。しかし、それに対応するのは人間です。当然出来ることと出来ないことというのがありますので、有事の際はそれを弁えて行動を起こして頂きたいと思います。