新規契約がないとジリ貧に
保険の契約を100件保有している代理店がいるとして、その100件全部が更新になるとは限りません。保険の目的そのものがなくなった、契約者の引っ越しで遠方に行ってしまった、他社(他代理店)に切り替えられた等色々な理由で100件は90件、80件というように少なくなってしまうのです。そうなると単純に代理店としての収入が減りますので、失った分は新しい契約で穴埋めしなければなりません。とはいえむやみやたらに動き回ったところで、そう簡単に新規契約が獲得できるわけではありません。では、どのような動きをすれば良いのでしょうか?闇雲に動く前にまずはターゲットを選定し、戦略を練ることが必要になります。という訳で今回は保険の新規獲得にまつわるコラムです。
顧客の情報の整理
まず、既存の顧客から新規契約に繋がるものがないかを検討します。分かりやすいのは、自動車保険ですね。既にご主人の自動車保険を契約頂いているのであれば、奥様の契約はどうなっているか?お子様の契約はどうなっているか?家族で1つの保険にまとめられないか?を検討します。1つの契約で複数台の自動車の保険を契約する方式をセミフリート、ミニフリートと言いますが、この方式でまとめると1%~3%程度保険料の割引が受けられます。家族でバラバラの保険に加入していると、満期管理も複雑になりますし、台数分契約手続きも必要になります。ですが、1証券でまとめられる上に保険料も安くなるというメリットが伝われば、切り替えも容易です。もともと1台しかなかったのに、3人家族の契約を1つにまとめることが出来れば単純に2契約増えることになります。元々面識のある顧客からの案件なので、一から新しく顧客を開拓するよりも簡単ですよね。このような案内をするためにも、普段から顧客の家族情報を聞いてメモしておくと、新規獲得の際に役立ちます。
全ての保険を自分に
プロ代理店であれば、自動車保険だけではなく、火災保険、傷害保険、ゴルファー保険、生命保険といったあらゆる契約を自分のところで加入してもらえれば、増収効果があります。全ての契約を自分が代理店として対応することで、他の代理店に流出することを防ぐ効果も生まれます。ディーラー代理店は「車に関することは全て任せて下さい!」を売り文句に保険の営業をしますが、プロ代理店は「保険に関することは全て任せて下さい!」が売り文句です。法人契約はお抱えの保険代理店がいるので、結構1つの代理店に集中しているので、一元化できています。しかし、個人契約となると親は親の付き合いで、子供は子供の付き合いで加入して・・ということが多く、まだまだ見直す余地があるようです。
証券診断
これはディーラーがよくやる手法です。「どんな保険に加入していますか、補償が足りなければアドバイスしますので、証券を見せて下さい」といって営業マンが証券コピーを取得する方法ですね。この応用編が「車を修理するのに保険の内容を知りたいので、証券を見せて下さい」とメカニックが証券コピーを取得する方法です。ディーラーでは新規契約を獲得するためにはたくさんのお客様に保険料の見積もりを出すことが必要で、見積もりを何件も作るためには大量の証券コピーが必要だと考えています。だからこそ、証券診断と銘打って証券コピー収集し、満期情報をかき集めるということに力を注いでいるのです。ディーラーによっては証券収集をノルマにし、壁面で進捗管理をしていることもあるくらいです。「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」ではないですが、成約率を上げるには案内する総件数を増やしていかなければならないととらえているんですね。
数で勝負①
新規契約を増やすためには、販売する人が増えれば良いのです。よって、募集人を増やすという対策も有効な策の1つです。保険会社が契約を増やそうと思ったら、他社の代理店に乗り合うか(他社商品を販売指している代理店に、自社商品の販売を委託するということ)、自社の保険を専門に販売する営業マンを雇うという手段を講じます。代理店であれば、新規で募集人を雇います。売る人が増えれば契約も増える。少なくともその募集人自身やその家族の契約は新規契約として見込めます。勿論募集する人間を増やした以上は、コンプライアンス教育だったり、給与支払いだったり、勤怠管理だったりとやらなければいけないこともありますがね。手間と労力はかかりますが、これもまた新規契約を獲得するための秘策です。
数で勝負②
代理店目線で新規契約を増やそうと考えれば、乗合保険会社を増やすことも検討されます。お客様に保険を案内する以上、案内できる保険が多いと選択肢が増えますから、成約率を上げることができます。「A社の保険に加入したい」と話しているお客様に「A社からは販売を委託されていないので、ウチではご案内出来ないんです」と断ることもなくなります。一方で乗合にすごくメリットがあるかというと、100%良いことだらけとは言い切れません。代理店手数料の支払いには、その代理店がどのくらいの規模でどれだけの成績を上げているかというのが重要になります。1社のみ販売している代理店は、複数乗合している代理店よりも高めに手数料を支払ってもらえます。複数乗合することで手数料の優遇措置が取られず、結果的に支払われる代理店手数料が目減りしてしまったら、乗合の効果が薄れてしまいます。乗合した以上は、既存の保険会社での成績もあまり下げず、新しい保険会社での成果もそれなりに出せるくらいではないと、苦労に見合った報酬が得られないという残念な結果を招きかねません。
補償を手厚く
新規契約とは異なりますが、より多くの保険料を貰うという意味では、既存の顧客の補償内容を手厚くすることによって増収することも戦略の1つです。自動車保険で車両保険に加入していない人には車両保険の案内を、対物超過修理費用補償特約や個人賠償責任補償特約のような特約でも、全ての顧客にセットするようにすればある程度の増収効果はあります。また、火災保険のみ加入で地震保険には加入していないという場合には、更新の際に地震保険をセットした場合の保険料はいくらか?ということで計算結果をお客様に見せるやり方もあります。地震保険は契約金額の30%~50%の範囲で加入することが可能なので、50%の金額まではいらないけれども最低限の30%の補償だけは備えておこうかなという人もいるかもしれませんからね。大きな地震災害が起こると保険会社は売り止めをするかもしれませんので、何も災害がないタイミングで敢えて加入を勧めておくと、いざという時焦らずに済むのです。また、若年層の車のユーザーで、自賠責のみ契約して任意保険は加入しないという人達が増えています。無保険車と事故を起こして補償を十分に得られないという最悪の場合に備えて、敢えて自分の保険を手厚くすることをすすめる代理店もいます。新規契約ほどではありませんが、補償のアップは単価アップであり、その分保険料収入は増ることに変わりはありません。そのため、代理店システムでは「車両保険未付保」「○○特約未付保」等の条件で契約をリストアップし、ターゲットを選定できるような機能が備え付けられています。
最後に
今ある契約で満足し、貪欲に新規契約を獲得しようとする姿勢が見られない代理店は、厳しい顧客争奪戦が起こる保険業界を生き残れず淘汰されてしまうかもしれません。貴方も担当してもらうなら現状維持の代理店よりも向上心のある代理店に担当してほしい、そう思いませんか?