契約につきものの個人情報
保険の契約には個人情報がつきものです。名前は勿論、住所、生年月日、場合によっては勤務先の名前や連絡先の記入が必要です。そもそも個人情報とは個人を特定することができる情報のことを指しますので、自動車保険でいうところの車の情報や、火災保険でいうところの物件の所在地や建物の築年数等は個人情報には含まれません。仮にそれが外部に流出したとしても、個人を特定することは不可能だからです。とはいえ、お客様からお預かりした情報をむやみやたらに扱ってよいという訳ではありません。個人情報にあたる名前、住所、生年月日、本籍、電話番号と共に慎重に取り扱うことが求められます。2016年からはマイナンバー制度の運用が始まりますので、保険の申し込みの際にも必要になってくるかもしれません。そうなれば今よりも更に厳重な管理をしなければなりませんね。では、今回は保険会社と個人情報に関わるコラムをお届けします。
契約を特定する方法
全ての契約は保険会社のデータベースで管理され、必要に応じてデータを検索し、呼び出すこととなります。その時キーになるのは証券番号です。証券番号はマイナンバーと同じように1つの契約に1つだけ与えられる番号であり、他と重複することはありません。また、123456789や777777777のような特定されやすい番号で構成されることもありません。保険会社によってはAから始まる番号は火災保険、Lから始まる番号は傷害保険といったようにパターンを決めて運用しています。お客様から問い合わせを受けた場合は、必ず証券番号を聞きます。しかし、外出先や紛失等で手元に証券番号が分かるものがない場合は、契約者氏名による検索、車の登録番号による検索等も可能です。ただし、契約者氏名による検索で「サトウハナコ」のようにいかにもありそうな名前だと、全国のサトウハナコさんの契約が検索されてしまうので、その他の検索条件として住所で絞ったり、契約期間を入力して検索する範囲等を狭めると早く対応できます。
本人からの問い合わせじゃないと駄目なの?
個人情報が関わる実務において線引きが難しいのは、家族から問い合わせが来た時です。契約者の名義はご主人だけれども、日中は仕事で忙しいので奥様が代わりに電話をかけてくるというのはよくあることです。それを契約者本人からの電話ではないので一切何もお答えしません!と突っぱねるかどうかが微妙なんです。正直私は現役時代に家族だと分かれば、親だろうが子供だろうがバンバン問い合わせに答えていました。答える前には一応「契約者本人の了解を得て保険会社に問い合わせしてきているということですよね?」と念押しした上ですが・・・。損保はそのあたり意外とフリーな気がします。逆に生保は厳しいですね。私自身過去に父が契約者で被保険者が自分になっている生命保険の解約の手続きについて問い合わせをしたことがあるのですが、「契約者本人ではないから」という理由で質問する隙も与えられずお断りされたことがあります。まあ本来はそれが正しいやり方なんですがね。もし教えてくれる人がいたとしたら、その人が良い人だったということでラッキーだったと思いましょう。頭では個人情報の扱いには注意せよと分かっていても、他人ならいざ知らず身内からの問い合わせも断るかと言われると意外とそこはまちまちです。
情報漏洩の対策は?
かつて、契約手続きのために外資系生命保険の募集人さんと面談をしたことがありいます。その方はノートパソコンを使用して保険料の計算や解約返戻金のシュミレーションをその場でしてくださいました。面談はファミレスだったのですが、その募集人さんがお手洗いに行く時はそのノートパソコンを両手にしっかりと抱えて離席されていました。大事な商売道具であることは分かりますし、私も同業者ですから「盗まれないようにちゃんと見張ってますよ~」と言ったのですが、「いや、大丈夫です」「自分で持って歩きます」とノートパソコンは肌身離さず、という感じでした。恐らく会社から厳しく指導されているんでしょうね。持ち運べるノートパソコンは契約の手続きに便利な反面、紛失すれば大量の顧客情報が流出する可能性があります。パソコン以外からも書類の紛失で情報が流出することだってあり得ます。まず、個人情報に関わるものを持ち歩くときは、無暗に放置しないこと、可能な限り持ち歩くこと、これを各人が意識することによって「つい」「うっかり」紛失することを防ぎます。ノートパソコンについては、パスワードを設定しておくことで、万が一紛失しても容易に中身を閲覧できないように対策をしておきます。情報漏洩の恐ろしさ、重要性については各人の意識によるところが大きいです。
ここだけの話ですが・・・
人の名前を入力・検索すれば、その人がどんな契約をしているかすぐに分かります。「じゃあ、芸能人の契約も分かっちゃうの?」と思った方、鋭いですね。芸能人の契約も閲覧することができますよ。何なら後輩は担当代理店がプロ野球選手の旅行保険の契約を獲得したおかげで、その人の申込書とパスポートのコピーを見たことがあるそうです。芸能人だからといって、閲覧に制限がかけられているようなことはありません。本名で検索すればいくつかヒットしますし、同姓同名の人がいても誕生日が分かれば特定することは可能です。私も暇な時芸能人の名前を検索したことがあります。私が見つけた芸能人は傷害保険を契約してくれていました。保険料は現金で一括払いのため口座内容等までは分かりませんでしたが、職業は歌手になっていました。さすが芸能人。とはいえ契約を見つけたからといって、その内容を外部に話すほどおマヌケではありません。自分の心の中に留めておいてます。もしかしたらどこかにモラルのない社員がいて、そのような芸能人の情報をこっそり漏らしたり、興味本位で利用している人もいるのかもしれませんがね・・・。まあ、保険会社に就職する前の適性検査で秘密を守れる人間かどうか判断されているそうで、口が軽いもしくは秘密をばらしちゃうタイプの人は就職できないようになっているらしいですよ(真相はよく分かりませんが・・・)保険は通称で契約することはできないので、本名で活動している芸能人はどうしても特定されてしまいます。ただ、当然保険会社では契約内容に関わる情報しか知りえません。しかしこれが銀行となると、更に預金残高まで分かってしまうんですよね。話は変わりますが、社員同士の契約も閲覧できるので、「あの人保険料○○円支払ってるんだ~」とか「事故で保険金貰ったんだ~」という情報は正直バレバレです。銀行だとどうなんでしょうね。まさか「○○さんの口座の残高は△△円で、■■さんの残高は・・・」なんて誰でも見られるようになっているのでしょうか。そうだったら怖すぎです。保険にしろ銀行にしろ、高度なお客様情報を扱う職業に就く者には、それにふさわしいモラルが求められます。
個人情報は脅威か武器か
保険会社、代理店にとってお客様の情報は仕事のタネです。満期の案内の時に利用しますし、年賀状やDMを出す時にも利用します。生命保険を販売している代理店であれば、お客様の情報を誕生月ごとに分け、誕生日を過ぎて保険料が上がってしまう前に案内をする、契約を済ませてしまう等して情報をうまく営業に生かすこともしています。ターゲットを絞り最適と思える時期に保険の案内をする・・・適切な使い方さえしていれば、個人情報は脅威ではなく契約獲得に有効な武器となります。よって、その扱いを過度に怖がる必要はありません。