損保会社の事務ってどんな仕事?
皆さんは損害保険会社の事務と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?
書類の整理、電話、来客応対といったどの会社でもありそうな仕事は思いついても、損害保険会社特有の仕事というのは思いつかないのではないでしょうか?
この記事では損害保険会社に丸7年勤務した私の体験談を元に、損害保険会社の事務担当が行う仕事についてお話したいと思います。
損害保険会社の社員の業務
社員の業務は大きく分けると、「総務」「事故」「営業」の3つがあります。
「総務」は、損害保険会社だけではなくどの会社にも存在しますが、経費精算だったり人事だったり会社全般の運営を携わる部署です。
この部署に配属されると、保険に関ることは滅多にありません。
「事故」は、イメージが掴みやすいと思います。
事故に遭われたお客様からの電話を受け付けたり、過失割合について交渉を行ったりします。
勿論事故は交通事故だけではなく、火事に遭われたお客様、怪我をされたお客様も含まれますので、毎日たくさんの案件と関ることになります。
最後に「営業」ですが、これは契約手続きに関ることを一挙に引き受ける部署です。
基本的に損害保険というものは、保険会社から委託を受けた代理店さんが販売するものです。
よって、社員がお客様のご自宅に行って申込書にサインを貰うということは滅多にありません。
社員は代理店さんがお客様と円滑に契約手続きが出来るようアドバイスをしたり、保険料を計算したりとサポートをするのが仕事になります。
今回は、この「営業」で働く事務担当の業務内容ついてお話していきます。
メインの業務は計上
お客様と代理店さんが結んだ契約は、計上という作業をすることでコンピューターにその内容が登録されます。
コンピューターに内容が登録されると、契約内容やお客様の情報等が全国どこのパソコンからでも見られるようになります。
(データを見るためには、保険会社独自のシステムにアクセスする必要があるので、一般人が見ることはできず、また個人情報流出の観点からその取り扱いには十分注意をしています)
この計上という作業は代理店さんでも出来ますが、システム上の制限から自動車保険や火災保険といったごく一部の保険しか出来ません。
それ以外の賠償責任保険や工事保険といった保険は、全て事務担当が計上を行うことになります。
この計上という作業ですが、申込書の内容に不備があったり、保険料の計算が間違っていたりとミスがあれば、その都度修正をしなければなりません。
よって事務担当は、計上する保険の規定や申込書の書き方について知識を備えておくことが要求されます。
勿論私達の脳はスーパーコンピューターではありませんから、全てのルールを暗記することは不可能です。
しかし分からない場合でも、規定を読み込んだり、参考になる資料を探したりといった努力をすることが求められます。
仕事のパートナーは代理店さん
損害保険を販売する代理店さんにも、色々な種類があります。
保険を販売することだけで収入を得ているプロの代理店さん、不動産業等賃貸や新築のお客様に対して保険を販売する兼業の代理店さん、住宅ローンを組んだお客様に対して火災保険を販売する銀行も代理店さんです。
最近CMでよく見る「ほけんの窓口」は、1番最初に紹介したプロの代理店さんに該当します。
この代理店さんも、1社だけの保険を扱っているとは限りません。
お客様にたくさんのご提案ができるようにと、複数の保険会社から委託を受けている代理店さんが多いです。
とは言え、販売する保険会社の数が多ければ多いほど、各保険会社の規定や商品の微妙な違いが分からなくなってしまったり、確認を取りたくなることがあります。
そのように代理店さんが困ってしまった時にサポートするのが、事務担当の役目です。
例えばパソコンで書類を作成したいんだけどやり方を確認したいですとか、積立保険の新規契約をご案内したいんだけど必要書類は何かですとか、問い合わせを受ける内容は多種多様です。
ここで誤った内容を答えてしまうと、代理店さんだけではなくお客様にもご迷惑をかけてしまうことになります。
保険契約は、信頼が大切です。
何度もミスをするような保険会社や代理店さんに、いざという時頼りたいなんて思いませんよね?
社員は迅速に間違いのない回答が出来るよう、常に勉強をしておくことが求められます。
お客様対応も大事な業務
業務中には、お客様からのお電話や来客もあります。
契約は代理店さんがして下さると言っても、問い合わせや心配事を直接保険会社に聞いてくる、あるいは直接出向いて手続きに来られる方もいます。
1番多い質問は、やはりお金のことです。
「月末に支払い予定の保険料が残高不足で引き落としできないけれども、どうしたら良いか?」、「今口座振替で契約しているけれども、ポイントを貯めたいのでクレジットカードに変更したい」等お金に関する電話は特に月末に差し掛かると多くなります。
補足をしますと、自動車保険や火災保険には支払い猶予期間というものがありますので、今月支払えなくても来月まとめて支払って頂ければ補償は有効なのです。
ただ、未払いの期間があまりに長くなると、お客様との契約は無効(保険用語的に言うと解除と言います)になります。
解除間近のお客様からお問合せがあった場合は、どうにか期日までに入金して頂きたいとお願いします。
解除になるということは、無保険になるということです。
事故の報告を頂いても、保険会社は何の対応も出来ません。
後からお金を支払うからと言っても、容易に契約を復活できるものではありません。
トラブルを未然に防ぐためにも、月末には代理店さんと協力して入金管理を行います。
他にも「証券が届かない」という問い合わせが多くありました。
私が勤務していた保険会社は、契約後1週間程で契約者住所に証券を届けるのですが、「1ヶ月経っても届いていないのですが・・・」といった類の質問が来るのです。
そのような場合は、大抵お客様が他の郵便物と一緒に捨ててしまったり(DMと勘違いする方が多いようです)、実は契約直後に引越ししていたりと、何かしらお客様側の事情によって手元に無いということが多いのです。
ごくたまに郵送中紛失ということもあるらしいので、一応お客様のお名前と住所と証券発送日を郵便局に伝えて調査してもらうのですが、大抵は「○月△日に■■郵便局より配達済み」といった旨の回答が来ます。
確かに保険証券って重要な書類ですし、普通郵便で証券を送るのもいけないのかもしれません。
しかし全件配達記録で証券を送っていたら経費がかさむ一方なので、それだと保険料を高くしてその経費分をカバーするしかないのです。
お願いだから保険会社からのお知らせや郵便物は何でもかんでも不要なものと思わず、中身をチェックしてから破棄して頂きたいと思います。
ミスしてはいけないお金の話
事務担当はお客様から頂く「保険料」以外にも、積立保険の「満期返戻金」や、契約者貸付の「貸付金」、解約や契約内容を変更した場合の「返戻保険料」等たくさんのお金に関る作業があります。
お金は1円でもミスをすればそのミスをリカバリーしなければいけないので、最新の注意が求められます。
特にお客様から「早くしてほしい」と要望を頂くのが、「満期返戻金」と「貸付金」の2種類です。
満期返戻金は、例えば10年間保険を契約していて、満期になった翌日に●万円支払うといった類のものなので、お客様によってはそのお金をあてにして他の支払いに回そうとしている方がいます。
貸付金は、お客様が積み立てているお金の中からいくらかを引き出すという類のものなので、お客様は早く手元にお金が欲しいと思っていることが多いです。
お客様の希望に応えるためにも、必要な書類(免許証のコピーや印鑑等)を不備なく揃えなくてはいけません。
私が初めて窓口でお客様と貸付の手続きをした時には、先輩が「後からミスがあってはいけないから・・・」と親身になって一緒に書類をチェックして下さいました。
保険会社は決して銀行ではありませんが、多額のお金を動かす企業なんですよ。
以上主な事務担当の仕事をお話しましたが、少しイメージがつかめましたか?
他にも保険の商品の勉強会の主催だったり、保険の講習の講師を務めたりと、事務担当の仕事は幅広いです。
1日の中で「暇だな」と思うことは滅多にありません。
常に時間との戦いで働く業界だと思って頂いた方が良いかと思います。
By A子 2015/2