2つの解約
自動車保険の解約には、大別すると2つの手続きがあります。1つめは、単純に車が廃車になる等存在しなくなったので解約するもの(任意解約と呼ばれます)。2つめは、解約してすぐ再加入するために解約するもの(中途更改、中途更新と呼ばれます)。自動車保険を解約する時も、何点かポイントがあります。そのポイントを抑えておけば、無駄な保険料の支払いを省くことができますし、本来失う予定だった補償を継続させることができる等のメリットがあります。自動車保険を解約する予定がある人は、是非ご一読下さい。
何故解約するのか?
車を廃車にした、譲渡した等の理由で自分の手元から車が無くなった場合は、自動車保険は解約をしなければなりません。車が存在しないのに、自動車保険をそのままかけておくことは許されません。それは「等級を不正に進行させる」という悪意ある行動とみなされます。せっかく進行させた等級が勿体無いと思う人は、中断証明書の発行手続きを行えば大丈夫です。y中断証明書は、解約時点で7等級以上であれば、車を再取得した際に再びその等級からスタートするために保険会社から発行してもらうものです。中断証明書があれば、6等級から再開させる必要がないので次回の保険料は安くできますし、発行自体は無料なので、しばらく車に乗る予定はないけれどもとりあえず発行してもらおうということも可能です。また、解約時に中断証明書を発行しなかったけれども、やっぱり欲しいということで2~3年前に解約した契約の中断証明書を発行してもらうことも可能です。中断証明書の発行期限、使用期限には5年や10年といった長めの期間が設定されていますから、焦る必要もありません。また、車があるけれども1度解約をすることもあります。保険会社をA社からB社へ変えるという時は、解約が必要なのは分かりますよね。ただ、保険会社を変えなくても解約をすることがあるんです。それは、既存の契約の変更手続きをするのでは対応できない時に使います。例えば元々1台車を所有していて、家族が新しく車を購入したので2台の契約を1つにまとめたいといった時は解約+新規の手続きをします。また、ちょっと違った解約の手続きとして、あいおいニッセイ同和損保の妊娠特則という制度があります。これは妊娠のために長期間自動車を運転しない人に中断証明書の発行を認めるもので、出産後にまた運転ができるようになれば契約を再開するというものです。これは中断前の契約も、中断再開後の契約も同じあいおいニッセイ同和で契約しなければいけないという条件がありますが、現時点でこの制度を取り入れている会社は非常に少ないので、保険料の節約を考える妊婦さんにおすすめです。
解約をする日
1月1日始期の契約で、毎月5000円の保険料を支払っている自動車保険があるとしましょう。この契約を仮に5月28日に解約するとなった場合、必要な保険料は1月1日~5月30日の5ヶ月間、つまり5000円×5ヶ月分の25000円ですね。では、6月2日に解約するとなった場合はどうなりますか?月払いの保険料は解約する時も月割で計算されます。よって、1月1日~6月2日までは実質6ヶ月とカウントされますので、必要な保険料は5000円×6か月分の30000円になります。わずか何日か違うだけで支払い保険料に1か月分の差が発生します。実際に車を手放したのが6月2日ならば支払いは仕方ありませんが、5月中に車を手放していたのに手続きを忘れていて6月になっていた、とあれば自己責任です。保険会社によっては解約日を実際に手放した日でなく、手続きした日付を重視することもあります。日付を遡って手続きできることは滅多にありません。(代理店に解約のことを伝えていたけれども、代理店が書類を作るのを忘れていた等特殊な事情があれば認められるかもしれませんが・・・)また、保険契約が終了しても手続きした日によっては、翌月まで保険料の請求が続くこともあります。保険会社の手続きと銀行の引き落とし手続きはすぐ対応できるようにはなっていないので、解約したのに入れ違いで引き落としになってしまうこともあります。誤って引き落としになってしまった保険料は返還となりますので、待っていて下さい。
不正で解約しても発覚するもの
等級の運用について、解約して他社で切り替えて誤魔化そうとする人が少なからずいます。6等級で2回事故を起こして、更新は1等級確定だから事故のどさくさに紛れて解約して、他社で素知らぬ顔をして6等級で加入したという事例を経験したことがあります。他社で契約する時は、前の契約の情報(事故の有無や等級等)を告知してもらうのですが、この時に嘘をつくんですね。個人情報の問題があるので、代理店は前の契約の会社に事故の情報を尋ねることはできませんから、結局契約者の言うことを信じるしかないのです。一方、保険会社間は等級の不正な使用を防ぐために等級についての情報交換を行っており、契約成立後にデータの付けあわせを行っています。そこで、A社で事故が2回あるのだから、B社では6等級ではなく1等級に訂正すべきという結果が出ると、速やかに訂正しなければなりません。本来このような行為は告知義務違反であり、保険会社の方から契約解除を言い渡しても良いくらいだと思うのですが、私が見た事例は等級を訂正後保険料の差額を支払えば特にお咎めなしということで終わっていました。とにかく、ズルをしても後でバレるのですから、粛々と1等級の保険料を支払って頂きたいものです。
車がなくなっても解約しなくて良い?
車がなくなればそもそも補償するものがないので、保険をかける必要はありません。だから解約をするのです。しかし、自動車保険の契約内容によっては、自動車事故とは全く関係ない事故を補償するものがあります。例えば人身傷害にはエレベーターや自転車等で怪我をした場合に保険金を支払うものがありますし、個人賠償責任補償特約では契約者やその家族が第三者に対して弁償の義務を負った場合に保険金を支払います。車はなくなったけれども、これらの補償がどうしても欲しい!という場合は、自動車保険を解約しなくても大丈夫です。更新は認められませんが、満期までは継続できます。これは保険会社によって考え方が異なるかもしれませんから、必要に応じて直接保険会社に問い合わせして下さい。もしかしたら、代理店も知らないことかもしれません。
解約は自動的ではない
保険を切り替えたら古い契約は勝手に解約になると思っている人がいますが、そんなことはありません。新しく契約する時は、必ず前の契約を解約して下さい。同じ保険会社なら二重契約であることがすぐ分かるのですが、他社で切り替えたら判明するまでに時間がかかります。前述の等級の不正行為と同様、1つの車に2つ以上の任意保険がかけられていないかも保険会社同士で情報交換しているので、二重契約していてもいつかはバレます。前の契約の解約日を遡及させることは基本できませんから、自ずと新しい保険の契約の始期を遅らせることになります。そうなると、車両新価特約がつけられないだの、前と保険料が違うだの、解約保険料が少なかっただの何かとトラブルになります。恐らく代理店も「前の契約は解約して下さいね」と伝えているはずなのですが、いつまで経ってもこの手のトラブルは耐えません。古い契約を止めて、新しく入り直す。やることは全然難しくないのです。たった2つのことなのに、できない契約者が多数います。
余談ですが・・・
自動車保険の解約と解除は異なりますので、注意して下さいね。どちらも契約が存在しなくなるということに変わりはありませんが、解約は契約者側から契約を止める行為であり等級は引き継ぐことができます。解除は不払いを理由に保険会社側から契約を止める行為であり、次の契約は6等級からスタートです。(等級が低いときは、それを引き継ぎます)似たような言葉ではありますが、この意味を履き違えると後々面倒なことになるかもしれません。とりあえず、解約するまでは保険料を欠かさずに納めましょう。