ディーラー営業の今
保険会社には、ディーラーの保険販売をサポート・促進を担当する営業社員がいます。ディーラーの営業マンは男性が圧倒的に多いですから、保険会社の営業社員も男性社員がその役を担っていました。しかし、ここ5~6年程で女性の活躍推進の考えから女性社員がディーラーを担当することが増えてきました。大勢の男性の中に女性が出向いていくなんて「え?」と思われるかもしれません。しかしディーラーの営業マンが保険を売る際に不安だったり疑問に感じるのは、実は保険の商品内容や補償云々の話ではなく、申込書の書き方だったり契約に必要な書類の中身だったりといった事務的なことが多かったのです。よって事務知識のある女性社員が訪問することは、ディーラーにとっては完成度の高い申込書が作成できること、保険会社にとっては後日申し込み内容や書類の不備等について指摘する手間が省けるという具合に、双方にメリットがあったのです。仮に事務知識のない女性社員、例えば新入社員が入社してすぐディーラーの営業担当になった場合でも、男性とは違う女性ならではの決め細やかなサービスが評判で、女性がずっと担当し続けているというディーラーが多いです。では、男性社員は何をしているのか?と言うと、勿論女性と同じく店舗を廻って保険の販売をサポートしたり、本社の役員等と交渉をしたりといった少しレベルの高い仕事をこなしたりしています。ディーラーには色々な保険会社の社員が出入りしますから、うかうかしていると他社に契約を持っていかれてしまいます。会社のデスクに座っていても契約は増えません。よって保険会社の社員には、ディーラーの営業マン達の心を鷲掴みにする対応が求められます。
店舗で何をするか
保険会社の社員は、ディーラーの店舗をただ巡回しているだけではありません。新規の案件はないか、更新間近のお客様対応は終わっているか、困っていることはないか等を確認します。新規の保険があまり獲得できないという店舗に関しては、店長や店舗の保険リーダー(保険プロモーター等色々な呼び方がありますが、保険の獲得件数や目標などを管理する人です)と相談の上、どうやったら保険が獲得できるかを相談しあいます。例えば新規の契約を獲得するためには、見積もりをさせてくれるお客様を見つけなければいけません。とはいえ、声をかけたお客様が必ず見積もりOKと言ってくださるとは限りません。特に身内や友人に保険代理店がいるようなお客様には、声をかけたところで切り替えてくれる可能性は低く、見積もりさえ出させてもらえないことがあります。仮に見積もりを渡せたとしても、そこから成約にまで持ち込める可能性は低いでしょう。よって、なるべく多くの種を蒔いておく必要があるのです。そこで車検や点検、修理に来られたお客様に声をかけてはどうか、店内にアンケートBOXを設けて、見積もり希望のお客様を探してみようかといった案を練ります。場合によっては、見積もりを希望されたお客様にはBOXの箱ティッシュプレゼントをしよう等といったキャンペーンっぽく進めることもあります。とにかくあの手この手で何とか成果に繋げようと共に悩み、考え、実行に移す。これが保険会社の社員の仕事です。
勉強も大事な業務
ディーラーの店舗で勉強会を開くのも、保険会社の社員の大事な仕事です。勉強の内容は主に自動車保険の商品に関することですが、特に改定(新しいサービスの販売開始や制度の変更)に関する勉強会は必ず行うものです。これまでお客様に案内していたサービスが変わるのですから、お客様にきちんと説明できなければいざという時お客様に迷惑がかかります。無用なトラブルを避けるためにも、改定に関る勉強会は全員参加できるよう時間や日程を調整して開催します。場合によっては1日複数回同じ講習をやったりするので、終わった頃には声も枯れる程です。しかも説明を聞いた人達から質問された場合には自分が答えなければいけないのですから、社員にはしっかりとした事前準備が求められます。他にも商品に関する知識はあるんだけれども、お客様の前だと緊張してうまく話せないという人のために、ロールプレイング形式で勉強会をすることもあります。社員がお客様役を演じ、架空の保険証券を見ながら保険の案内をする場面を想定して練習します。この時、社員がわざと嫌なお客様のフリをして、細かいことを色々聞いたり、質問攻めにしたりすると面白いですね。話を黙って「うんうん」と聞いてくれる優しいお客様ばかりとは限りませんから、色々な場面を想定しておくことが必要なのです。
コンプライアンスの重要性
ディーラーが保険を販売する際に、「車検代金を割引するから保険に入って」というのは保険業法で禁止されている行為です。車検代金で得をすることによって、実質保険に安く加入できることになってしまうので、それでは契約者同士の公平感が保てないからです。同様の理由で、旅行代理店が旅行代金を安くするからといって海外旅行保険の加入を勧めるのも禁止されています。もしこのような禁止事項が発覚した場合、その代理店は保険会社から何らかのペナルティを課せられます。ペナルティの内容とは、その募集人の今後一切の保険販売を禁じることであったり、代理店に対して罰金であったりと状況に応じて様々に使い分けられています。とかくディーラーは車検以外にも新車販売、点検、修理等でお客様と接する機会が多いですから、ディーラー側からお客様に「割引するから保険に入って」と言わせないのは勿論、お客様側から「保険に入るから割引して」と言われても断れるよう日頃からコンプライアンスに関しては注意喚起をておく必要があります。コンプライアンスの問題は1度発生すると、その後始末書を書いたり再発防止の策の検討をしなければならない等、マイナスの業務が多く、他の業務を停滞させる要因にもなりかねません。営業成績が良くても、コンプライアンス問題が発生しては、その努力も意味のないものになってしまいます。よって、保険会社の社員はルールを守った上で、成果のある営業活動が出来るようディーラーの体制を整えなければいけません。
本業協力
ディーラーに自社の保険をたくさん販売してもらうためには、保険会社もディーラーの本業に協力をする必要があります。それが、保険会社の社員が乗る車(社有車)の購入です。保険会社の所有する車は、基本的に車検切れのタイミングで買い替えとなります。勿論経費削減の観点からは、車を買うよりも車検に出した方が良いに決まっています。しかし、車を買うことによって、保険会社とディーラーの間の信頼関係は強固なものになります。また、複数の保険会社を扱っているディーラーであれば、「A社がこの間車買ってくれたから、A社の保険を案内しようかな」と柔軟に対応してくれることもあるので、うまくいけば他社を出し抜くネタにもなります。ディーラーにとっても、大した営業活動をすることなく車を何台も買ってくれる保険会社は良いお客様なのです。
これからのディーラー営業
今後のディーラー営業は、通販系自動車保険が契約数を伸ばしていること、そして人口減で車に乗る人が減ってきていることから、牌の奪い合いになるだろうと予想されます。その厳しい状況の中で、いかに契約を獲得できるかは、ディーラーの営業マンの努力だけではなく、保険会社の社員の熱意にもかかっています。ディーラーの健やかな発展のためにいかに情熱を傾けられるかで、仕事のやりがいも変わってくると思います。