保険まっぷ

代理店が廃業する時

代理店は大型化へ

代理店の種類には1人で経営しているもの、少数精鋭で経営しているもの、大型化して各地に拠点をおいて経営しているもの様々あります。個人のお宅の前に「○○保険会社」の看板を見たことはありませんか?その看板は、そこのお宅が代理店事務所であることの証です。とは言え、1人で契約から事故対応をまかなうには限界があります。契約1つとっても見積もり、内容説明、契約手続き、変更手続きがあり、それに加えて昼夜を問わず事故の対応に追われるわけですから、特に募集人が高齢化してくると募集活動に支障を来たします。よって個人で代理店を経営しているという方は減り、高齢を理由に廃業する、もしくは他の代理店と合併して大型代理店所属の募集人となる傾向が増えてきています。よって、今回は代理店を廃業する時にはどのようなことに注意しなければならないのか、私の経験談を含めて紹介します。

契約の引き継ぎ先を決める

個人経営の代理店が別の代理店で引き続き募集を続ける場合は、元々の顧客はそのまま引き継いでいけるので、「代理店の所属が変わります」「今後の問い合わせは新しい事務所の方へ・・・」といたお知らせをするくらいで、特に難しいことはありません。面倒なのは、代理店が今後一切募集をしない場合です。その代理店が保有していた契約を、どこかの代理店に引き継いでもらわなければいけません。引き継ぎ先は募集人が「この人(事務所)が良い」という御指名があればその人に打診し、もしなければ保険会社で適当な代理店を見つけます。引き継ぎ先が決まったら、顧客に代理店廃業の知らせと代理店変更のお知らせについて手紙を出します。もし契約者側が「別の代理店で加入したい代理店がある」というのであれば、個別に手続きを行います。本来保険契約期間中の代理店変更は、1度契約を解約してから再契約になるのがセオリーです。自動車保険ならば、等級の進行が遅れる等の不利益が生じます。しかし、代理店側の事情による代理店変更ならば、この不利益を被ることなく代理店変更をすることが可能です。契約者から申し出がなければ、代理店が解約する日付を以って代理店の変更が実行されます。その日以降発生した事故は新しい代理店が担当します。もし解約や保険料減となる変更が発生したら、新しい代理店が代理店手数料の戻し入れも行わなければなりません。契約が増えるということは良いことのように聞こえますが、必ずしもプラスになることだけではありません。当然手間も増えますし、募集した時の手数料を貰っていないのに、解約の対応をさせられて、おまけに代理店手数料の戻し入れもさせられる等マイナス面もあるのです。このリスクを十分理解し、受け入れてくれる代理店を選定しなければいけません。

保険の募集に関わるものの回収

代理店を廃業したら、当たり前ですが募集をすることはできません。よって、その募集人が保険募集に携わることができないように、保険に関わるものは全て没収となります。パンフレットや未使用の申込書は当然回収か、その場でゴミとなります。代理店のパソコンに入っているシステムを止め、契約も見られないように、保険料も計算できないようにします。領収証、手書きの自賠責証明書綴等保険に関わるもの全てを回収します。代理店手数料を振り込んでいた口座も解約です。口座は「○○保険会社代理店△△」の名前で開設されていますから、廃業後もそのままにしておくと、契約者が間違って送金してしまう可能性も否定できませんからね。回収した一式書類は保険会社で一定期間保存し、問題がなければ破棄します。

夜逃げされたら大変!

上記の通り、代理店を廃業するにも色々と手続きが必要なのです。面倒だったのは副業で代理店を経営していたとある会社が、夜逃げ同然にいなくなってしまった時ですね。最初は「最近申込書の提出が遅いなあ」とか「お客様から代理店と連絡がとれないからこっち(保険会社)に電話してみた」でちょっと気になる程度だったのですが、実は夜逃げしていたことが分かり、事務所はもぬけの殻。本業の関係者も連絡とれず。いつ行っても社長の自宅は真っ暗。これにはさすがに参りました。まず保険料領収証を回収できないので、どこかで詐欺に使われている危険性がある。満期対応もせず逃げてしまったので、更新間近のお客様の契約手続きをしないと契約が無保険になってしまう。(まさか代理店な夜逃げしたから代わりに手続きに来ました、なんて言えないし・・・)本店からの指示は「とにかく逃げた募集人を探せ」「近所の聞き込みをして、逃げた先に心当たりがないかを調べろ」。そんなこと警察じゃないんだから簡単に出来ませんよ。本店は現場の人間を何だと思っているのかと、さすがにイライラさせられました。それでも一応できる限りの調査はしましたが、そんな簡単に見つかったら苦労しませんよね。同じ廃業でもあんなに辛かった廃業手続きは後にも先にも1回しかありません。

廃業はコンプライアンスが原因の事も・・・

廃業は本人の意思によるものとは限りません。募集人が保険料着服だったり、不正だったりを行っているのが発覚した場合は、問答無用で代理店廃業を言い渡す場合もあります。その時も代理店変更をしなければなりませんが、募集人の廃業理由が「不正を行ったから辞めさせます」と正直に書くことはありません。せいぜい「一身上の都合により退職(廃業)します」という表現に留める程度です。事件があまりに大規模だったら、新聞で報道されてしまうので、正直に書くかもしれませんが、そこはさじ加減1つです。不正の事情聴取も行いつつ、代理店廃業も同時進行で行います。この場合は双方円満で「お疲れ様でした」で終わるわけにはいきません。今までパートナーとして一緒に活動してきた代理店と、最悪な別れ方をすることになります。できれば避けたい事態なので、代理店には定期的なコンプライアンス教育を行い、異変があれば気付くよう常日頃心がけています。

代理店を変わる時も意外と大変

廃業とは少し異なりますが、A代理店に所属していた募集人が、B代理店に所属を変える時も意外と面倒です。何が面倒かって、その募集人が持っている顧客を誰が引き継ぐのかという論争が出るからです。A代理店にしてみれば募集人の獲得してきた契約は当然自社で管理、フォローをして維持してきたものですから、募集人個人が自由にして良いものだと思っていません。当然手放したくはないですよね。対してB代理店は募集人が契約をたくさん持ってきて異動してくれれば、自社の契約数アップにつながるわけですから、なるべく多くの契約を持ってきてほしいわけです。さらにお客様の中には「その募集人じゃないと契約しない」みたいな人もいるわけで・・・。誰がどの契約を担当するかを決めるのに苦戦するところもあるようです。

個人代理店は後継者の育成が必須

代理店が大型化し、個人代理店が淘汰されつつある現状でも、個人代理店として頑張っている人もいます。そのような代理店に求められるのは、やはり後継者の育成です。後継者は知識だけではなく、その募集人が築いてきた人脈やお客様との信頼関係を引き継げる人であるべきです。しかし、そのような募集人は一朝一夕でできるものではありません。個人代理店の店主は自分が引退した時だけではなく、病気やけが等で長期不在になるリスクも考慮したうえで、早期に後継者を育成しておくことが必須と言えるでしょう。大型代理店が必ずしも成功するわけではなく、個人代理店であっても顧客と良い関係を築けているのであれば、末長く繁栄し続けることでしょう。