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損害保険と契約者死亡

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契約管理はどのように?

皆さんは家で保険証券をどのように管理していますか?また、誰がそれを把握していますか?保険証券は、有事の際に速やかに保険金請求ができるように一元管理をしておくのが好ましいです。クリアファイルにまとめて入れておくだけでも違います。解約済みのものや、満期が既に到来しているものは破棄をし、現在有効な証券のみを残すようにしましょう。何故こんなことを書くのかというと、この証券及び契約の管理を日頃から行っておくことで、契約者本人が亡くなってしまった時の相続の手続きがスムーズにいくからです。というわけで、今回は契約者死亡にまつわるコラムです。

掛け捨て保険と積立保険では相続の手続きが違う

損害保険には自動車保険や火災保険のような掛け捨て保険と、積立傷害保険に代表される積立保険の2種類があります。契約者が亡くなった場合、どちらの種類を契約しているかで相続の手続きが変わってきます。掛け捨て保険は正直名前を変更するだけなので、手続きは楽です。保険商品によってやり方は少し違いますが、大抵は死亡した契約者から新しい契約者に名義を書き換えるだけです。しかし、積立保険は違います。満期まで積み立てておいた保険料を、誰かに相続させる必要があります。この時、希望すれば誰でも相続を受けられるわけではなく、基本的には法定相続人である親族の中から新しい契約者を決めてもらい、その人に引き継いでもらいます。積立傷害保険であれば、契約者が亡くなった時点でその契約が無効になることが多いです。よって、死亡日を解約日とし(これは死亡日から時間が経っていても事実発生日を重要視しているため、遡及が可能)、解約日時点で受け取れる解約返戻金を受け取ることになります。ちなみに私はこの相続の手続きが嫌いでした。お客様に書類を説明して提出して頂いても、あの書類が足りない、この書類の中身が不十分ということで、何度もお客様に再提出を依頼したものです。それでは、次からはケースごとに相続関連でどんな事例があったのかを紹介させて頂きますね。

等級継承者がいない自動車保険

自動車保険の契約者が亡くなり、その娘夫婦から「父の自動車を譲り受けることになったので、手続きをしたい」と問い合わせがありました。しかし話を聞くと、その親子は別居。別居していると実の親子であっても等級継承はできません。娘夫婦が亡き父の自動車に乗るというのであれば、娘夫婦が元々所有している車と車両入替させる、2台目以降であれば複数所有の7等級(もう1台の車が11等級であることが前提)、勿論初めての車であれば6等級スタートの3つの選択肢しかありません。「できない」とお断りしたのですが、「20等級なのに」「このまま割引がなくなってしまうのは勿体無い」と色々お叱りを受けました。勿体無いという気持ちは分かりますが、保険契約上この親子は他人なので、他人に等級継承させるわけにはいかないのです。解約したら保険料がいくらか返金になるかもしれないので、それで我慢して下さい。

積立保険の満期の手続きをしようとしたら・・・①

契約者がとうの昔に亡くなってましたとさ、という話です。積立保険は保険期間が3年、5年と長期に渡るので、連絡をまめにとらない代理店や募集人が担当していると、満期になってから「実は亡くなっていました・・・」と気付くことがあります。家族から連絡があっても良いのではと思うのですが、たまたまその契約だけ見過ごされていたのかもしれませんし、満期の時に手続きすればいいやと思ったのかもしれませんし、放置される理由は各家庭色々あるようです。しかし保険会社にしてみれば、満期直前にこの事実発覚は正直困りものです。保険会社の約款上で「満期の翌日には満期返戻金をお支払いします」と謳っているため、相続手続きに呑気に時間をかけている暇はないのです。すぐ様必要書類を準備し、いつまでに契約者に提出するよう伝える等スピード感を持って対応させられる破目になります。この時お客様や代理店さんから「別にお金急いでないし、手続きはゆっくりでいいですよ~」なぞ言われるのですが、そこは保険会社の事情も察して頂きたい。満期過ぎても連絡が取れないならまだしも、満期前に連絡が取れているのに満期の翌日に返戻金が支払えないといことは、保険会社や代理店の怠慢だと見られてしまうんですよ!(誰に?それは監査部とかコンプライアンス部とかです)そもそも契約者の事情に変更等があったら保険会社に報告するのが契約者の義務だし、それを徹底させるのが代理店の役割では?と内心怒りつつも書類の提出をお願いするのでした・・・。

積立保険の満期の手続きをしようとしたら・・・②

続いては相続人がいませんでしたとさ、という話です。積立保険の満期案内を送っても連絡がなく、代理店が家を訪ねるとそこに人の住んでいる気配はなく。契約者が亡くなっていたために、空き家になっていたんですね。お葬式や家財道具の処分は行われても、保険の契約はそのままにされており、これまた満期直前に判明したというわけです。家族は遠方に住んでいることは知っているものの、その連絡先を代理店は知らず。契約者に連絡がとれないだけではなく、その家族にも連絡がとれないという何とも八方塞な相続になってしまいました。戸籍を見れば家族の住所が分かるので連絡が取れるかもしれませんが、戸籍を閲覧できる権利があるのは家族以外では弁護士や行政書士といった遺産に関する仕事を行うある一定の職業の人達だけです。相続人の行方を追うのに、保険会社自らが調査を依頼することはありません。近隣住民の方に家族の連絡先を知らないか聞き込みをし、「色々手を尽くしたけど探せませんでした」で社内的に処理をします。その処理は永久的なものではなく、暫定的に相続手続きを行わなくても良いとするもので、何年後かに家族が見つかり請求があれば対応するというものです。お客様に返さなくても済んだお金を、保険会社が懐におさめるという意味ではありません。積立保険は最低レベルでも満期返戻金が10万円くらいなので、途中で解約してもよっぽどすぐ解約しない限りは数万円が戻ってきます。100円200円ならともかく、万単位だとちょとした収入と思ってしまいますよね。家族の契約、特に1人暮らしの方の契約は、他の家族が知らない間にこっそり加入している可能性もあるので、よくよく注意して整理して下さい。

手続きはお早めに

ここで、銀行に勤めている知人から聞いた話を紹介します。窓口に亡くなった夫の口座があったので、引き落とししたいと奥様が来店されたそうです。見ると残高が1000円ちょっと。口座開設だけでその後特に入金もせず、放置されていた休眠口座で、メインバンクではなかったため、奥様も時間が経ってから気付かれたよう。奥様は簡単に1000円が引き落としできると思ったようですが、口座名義人が死亡した口座の手続きも、積立保険の相続並みに面倒です。銀行所定の書類に相続人全員の名前を書いたり、戸籍謄本を出したりと、決してその場では済まされないような手続きのオンパレードです。正直この1000円を引き出すためにそこまで苦労するのが良いとは思えなかった知人は、「手続きすると1000円以上経費がかかっちゃいますけど、それでも引き落とししますか?」と手続きの大変さを説明し、お客様にはそのまま口座を放置することに納得頂いてお帰り頂いたそうです。もし他の口座と一緒に手続きをしたのであればその書類がうまく使い回しできたのかもしれませんが、単独で手続きするほどのメリットはないということですね。口座もそうですが、保険も求められる書類は同じようなものなので(戸籍謄本、印鑑証明書等)まとめて手続きしてしまうのが好ましいです。場合によっては、存命中に手続きしてしまうのも有効です。