火災保険と地震保険
住宅ローンを組んで自宅を購入する人ならば、火災保険を比較したりランキングを見たり、口コミや評判などのチェックをしないで契約することが多いのではないでしょうか。銀行などの金融機関で住宅ローンを利用する際、必ず火災保険がセットになっているかと思います。住宅ローンを利用するなら火災保険は必須ですが、地震保険は任意です。
相続で得ている家や、住宅ローンを払い終えた家の場合、火災保険の比較やランキング、口コミや評判をチェックすることもあるでしょう。しかし今回の話題は地震保険ですが、他の保険、自動車や生命、ガン(癌)などの保険商品だと、比較サイトやランキングサイトなどがあるのですが、地震保険については見かけたことがありません。地震保険の評判がどうなのか、まとめたサイトも見当たりません。これは、どういうことなんだろうかというのが、最初の疑問でした。
保険は、それこそ大英帝国のロイズ協会の時代から、数百年という歴史をもつ商品、商売でもあって、多くの様々な保険が昔からあります。何でも保険にしちゃうたくましい人達が保険会社なわけで、そういう人が経営する会社で、加えて何といっても日本は火山もたくさんある世界有数の地震国ですから、当然、地震保険があっても不思議じゃありません。ところが、1966年まで、日本には地震保険というのは、存在しなかったというのです。
保険には料率というのがあって、損害の発生する可能性、確率と予想される損害金額、支払いの金額に対して保険料が決まります。大地震になると発生頻度がそんなに高いわけでもありませんし、もし大規模な地震が発生すれば損害が巨額になって、保険会社としてもとってもじゃないが払えきれない、現実的に一般の人が払える保険料に収まりそうにないといった理由からでしょう。地震保険は、存在しなかったというのです。
地震保険の発足
保険という商品、商売が日本に入ってきたのは、明治時代です。江戸時代には、今日私達が認知しているような保険制度はなかったようです。明治以降、大きな地震が発生するたびに、地震保険の必要性が言われ来たようなのですが、なかなか商売として成立しそうにありません。実現することはできなかったといいます。
地震保険の成立のキッカケになったのは、1964年の新潟地震です、管理人は、オニイサンと呼べと言うのは難しい年代のオジサンですが、さすがにこの記憶はありません。しかし時代はカラーテレビの普及が進みだしている頃で、衝撃的な地震被害の映像が記録され、報道されたといいます。死者はこの規模の地震では少なかったとされますが、液状化、石油タンク火災などが発生して、後の防災の研究に繋げられた被害が出されました。
後年、長じて新潟市内を訪れる機会のあった管理人は、地元の方から、信濃川にかかる萬代橋を、新潟地震でも壊れなった橋として、地元の方に説明してもらったことを思い出します。
ここで地震保険に動いたのは、新潟出身の政治家である田中角栄氏でした。新潟3区選出衆議院議員の田中角栄氏は、当時大蔵大臣でもあり、保険などを管轄する役所のボスです。地震保険を実現するべく、保険審議会、損害保険会社との協議を重ね、1966年6月に、「地震保険に関する法律」が制定されて、ようやく地震保険が誕生しました。
地震保険は、損害保険会社が自ら準備した商品ではなく、新潟地震を踏まえて、国が動いて実現に至った保険だったのです。田中角栄氏という政治家について、管理人は、いろいろ思うところはありますし、どちらかといえば、冷ややかな批判的な目で見ることが多いのですが、地震保険は、たしかに彼が動かなければ、この時に実現できなかったことと言えるでしょう。
地震保険の内容
そんな地震保険ですが、地震や噴火、そしてこれらによる津波によって、居住用の建物と生活用動産(家財)の損害を補償する保険となっています。あくまでも居住用の建築の補償です。火災保険などでは、事業のためのオフィス、工場などを対象とした火災保険がありますが、「地震保険に関する法律」では、対象としていません。また家財でも1個または1組の価額が30万円を超える貴金属や宝石、美術品などは含まれていません。
地震保険の加入、契約は、地震保険、単独で加入することはできません。必ず火災保険(住宅火災保険、住宅総合保険、普通火災保険、店舗総合保険等)とセットでの加入しかできないことになっています。また、現在は、火災保険の契約の時には、地震保険をセットで契約しないならば、火災保険の申込書、契約書等に、「地震保険はいりません」と署名、捺印をすることになっています。そんなわけですから昨今は、かなり多くの人が加入していると思います。
地震保険の保険金額なのですが、管理人の契約、加入している地震保険では、火災保険の保険金額の50%になっています。必ず50%なのかと思っていたのですが、地震保険に関する法律では、地震保険がセットされる火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内と定められているとのことでした。また上限も建物については5,000万円、家財については1,000万円が限度になっています。上限はともかく、50%では、家を建て直すことはできません。普通の火災保険は地震は免責ですから、もらえませんし。最初は何とも中途半端な設計だと思いました。しかし後で書いておきますが、地震保険は政府、国が再保険を引き受けており、全額という保険金を用意するのは、現実の予算の上では難しいという背景もあるようです。また地震保険の目的が、生活用の家をそっくり復元することではなく、まずは何とか生活を再建する、復興にむけての一歩を踏み出すための費用としていることもあるようです。大規模、広範囲の災害ですから、火災保険とは、位置づけが違うものと考えるべきなのでしょう。
地震保険の支払方法は、居住用の建物、家財について、全損、半損、一部損にランクを別けて保険金が支払われます。全損は、保険金額の100%、半損の場合は、50%相当額、一部損の場合は、5%相当額が支払われます。これは、どこの損保会社を通じて地震保険を契約しても変わらないでしょう。また、何がどの程度になれば、全損、半損、一部損なのかという基準も、同じです。地震保険も他の損害保険と同じように料率を計算しています。料率は、損害保険料率算出機構が出していますが、他の多くの損害保険が、参考純率なのですが、地震保険と自賠責保険は、基準料率になっています。これも損保会社によって内容に差が出ないことの要因でしょう。料率については、別に調べてまとめていますので、興味があればそちらを見て下さい。
地震保険の時価額ですが、同等の物を新たに建築あるいは購入するのに必要な金額から、使用による消耗分を控除して算出した金額をいいます。だから、新しいものをそのまま買うことはできないのですね。
こう見てくると、地震保険が不十分な中途半端な保険だと思うかもしれません。管理人もそうでした。しかしこうして調べてみると、完全に補償しようとっすれば現実にはできないことになるでしょう。大規模、広範囲な災害の時、まったくないよりは、とりあえず生活再建にむかえるある程度のお金という意味では、地震保険は意味がある制度とも言えるかと思います。
地震保険の限度と再保険
地震保険は、保険金の総支払限度額に上限があります。これは 地震保険に関する法律で定められているもので、1回の地震等によって政府と保険会社が支払う保険金の総支払限度額があるのです。大地震が発生した場合に、巨額な損害となる可能性があり、政府、国としても無限に責任を負うことができないための制限です。しかし、実際には、この限度額は、関東大震災規模の地震が発生しても保険金の支払いに支障のないように決定されています。まあそれ以上の地震なり災害があったら、国の存亡にも関わるような話ですから、無理を言ってもしょうがないか、とか管理人は思います。
先にも書きましたが、地震保険は、政府、国が再保険を引き受けています。いわゆる「再保険」とは、保険会社が保険契約に基づく保険金の支払責任の一部を他に転嫁する仕組みですが、地震保険の場合は、日本地震再保険株式会社というのがあります。日本地震再保険株式会社は、損保会社が出資して作った会社で、地震保険契約の全部は、日本地震再保険株式会社に集まります。そして純保険料の一部を政府、国に再保険料として支払って、政府、国も地震災害の時の準備金として積み立てているのです。
損保会社社は、保険料を将来の保険金支払いのための準備金として積み立て、あるいは運用をしているのですが、巨額で広範囲の損害の地震では、民間の保険会社の資金力だけでは保険金を支払いきれません。そのために、長い間、地震保険は実現できなかったともいえるでしょう。国が主導したからできた仕組みだから、保険金の支払いが、ある程度確実に行われるようになっているのでしょう。
地震保険の保険料
地震保険の保険料を決めるパラメーターは、建物の構造、等地別による基本料率に加え、割引率、長期係数を適用して計算されます。
建物の構造は、耐火建築物、準耐火建築物、省令準耐火建物等と、それ以外に分かれています。そして地震保険ならではの考え方が、等地です。建物がある地域で、地震の危険、確率が地域別に異なることから、全国を1等地から4等地まで4つに分けています。これはなかなかショッキングかもしれません。自分の住んでいる場所が、地震の可能性が高いとなると、あまりいい気分にはなりません。好き嫌いを言っても仕方ないのですが、この等地と建物の構造で、基本料率が決定、算出されています、これを計算し定めているのが、損害保険料率算出機構です。
地震保険の割引は、居住用の建物の耐震性能に応じて設計されています。「免震建築物割引」、「耐震等級割引」、「耐震診断割引」、「建築年割引」の4種類がありますが、重複しての割引の適用はできません。
免震建築物割引は、割引率30%で、登録住宅性能評価機関から交付される住宅性能評価書が必要です。
耐震等級割引は、耐震性能が耐震等級1から3まであって、10-30%まで割引きされます。必要書類は、やはり住宅性能評価書か、耐震性能評価書です。登録住宅性能評価機関または指定確認検査機関から交付されます。
耐震診断割引は、割引率10%。耐震診断または耐震改修で、建築基準法に定める現行耐震基準に適合していることが条件です。
建築年割引は、昭和56年(1981年)6月1日以後に新築された居住用建物と収容される家財に適用されますが、割引率は10%です。確認書類は、建物登記簿、重要事項説明書等になります。
管理人の自宅の場合は、耐震等級割引が適用されていました。