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自動車事故と損害賠償

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損害賠償

自動車事故の話の前に、損害賠償のベースの考え方から始めましょう。

損害賠償は、大きく言えば、民法によって定められています。民法は、私法で人と人の間のことを扱いますが、人を自由で平等なものとして扱います。
日本の民法は、フランスやドイツの影響を受けていて、そこには重要な3つの原則があります。私的自治の原則、契約自由の原則、過失責任の原則です。
損害賠償に大きく関わるのは、このうち過失責任の原則です。

損害賠償は不法行為法で扱われますが、不法行為法という名前の法律、法典があるわけではありません。不法行為に関する規定の全体を指して、不法行為法といっています

損害賠償の基本的な仕組み、考え方は、不法行為の成否、損害賠償の範囲、賠償額の算定の3点です。
不法行為法の目的、機能としては、損害補てんや被害者救済、があります。
生じた損害をどう分担するかということが重要です。

自動車事故は特別法が使われる

一般の損害賠償は、一般不法行為として分類されていて、故意または過失で賠償責任を負うという過失責任主義です。この故意または過失があることは、被害者(原告)が立証する必要があるのが通常です。
つまりこれは 誰でも、加害者として訴訟される可能性があるので、こうなっています。そうでないと「あの人は私の権利を侵害しています、損害賠償を求めます」と、じゃんじゃん裁判をする人が出てくるかもしれません。

この過失責任主義が、加害者に、やや厳しくなっているのが中間責任です。
中間責任とは、過失の立証責任は加害者にあって、自分には過失がないと証明する必要があります、これらは、特殊不法行為として分類されています。
監督者責任、使用者責任、動物飼育者責任などが、中間責任です。自分の従業員が仕事で自動車を運転していて事故となれば、使用者責任を問われます。この時に、自分に過失がないと証明するのは、加害者です。

ところが、過失があろうがなかろうが、原則賠償責任を負うとされる特別なケースが法律で定められています。国家賠償法、公害諸立法(大気汚染防止)などです。
そして、自動車損害賠償保障法も、この特別なグループの法律です。民法の基本原則である過失責任の原則が適用されないケースになっています。被害者の保護を最優先しているため、自動車事故の損害賠償は、国家賠償法、公害諸立法(大気汚染防止)と同じくらい加害者に厳しい法律になっています。

自動車損害賠償保障法

自動車損害賠償保障法では、加害者は原則として賠償責任を負うことになります。賠償責任を免れるには、自分に過失がなかったこと、被害者に過失があったこと、自動車に欠陥がないことを、加害者が立証する必要があります。通常に使われる不法行為法の民法709条などに比べると免責が難しくされています。民法709上では、4つの事柄を原告が立証する必要がああります。つまり、故意、または過失による加害行為、権利または法律上保護される利益が侵害された。損害が生じた。加害行為と損害の間に因果関係があるなどです。
さらに、責任能力、違法性阻却事由などを、加害者が立証すれば、原告の請求を退けることになります。
これに比べて自動車損害賠償保障法が、被害者の救済に重きをおいていることがわかるかと思います。

管理人は、自動車保険会社の味方などをするつもりはありません。
しかし、自動車の運転に限らず、人間が生きていく、社会生活を送るうえでは、様々なリスクがあります。悪いことをしようとしたわけではなく、誰かに迷惑をかけたり傷つける意思がなくても、過失や、運の悪さで、やってしまうこともあるでしょう。
仮に運が悪くて自動車事故の加害者になったとしても、損害賠償の責任を負います。任意の自動車保険で、対人、対物の無制限の賠償の保険は、必ず加入しておいたほうがいいでしょう。